「今まで出来ていたことの6割ぐらいしか、できなくなると思っておいた方がいいよ」
SLEではじめて入院した時に、同室の人に教えてもらったことだ。
今まさに、これを体感している。
頭痛がする。熱がある。顔に紅斑らしきものが確認される。首が痛い。
これ以上悪化しないように、私は布団で安静にしている。
理由は分かっているのだ。ここ10日ほど、私にしては頑張り過ぎていた。
それは主人がインフルエンザになったことで、家事全般をやることになり、特に息子のお弁当に関しては、何が何でもやらなければいけなかった。
それまでほぼ1日布団の中でゴロゴロとしていただけの私がだ、突然生活パターンを180度引っくり返して、甲斐甲斐しく家族のために働く。
はじめは半ばヒステリックな心理状況の中でこなしていたので、痛みを感じることはなかったのだろう。
肉巻きを作るぞと宣言していたにも関わらず、起き上がることができなかった今朝。
お弁当は結局主人が作ってくれた。
ところがその後息子が登校し、主人が出社した後朝からずっと寝ているのだけれど、一向に体調が戻ってこない。
SLEと共に生きるということは、こんなにもモロく、思い描く日常がぶっ壊されてしまうってこと。
いやいや違うって。怠けているんじゃなくて。体が日常を拒むものだから、私も身の置き所に困ってしまう。
次の瞬間再発し、不幸のドン底に陥れられる。
またステロイドの点滴からやり直しだ。
せっかくここまでステロイドの量を減らしてきたのに。
ここまで来るのに、結構かかったんだけれど。
またやり直しかよ。
しかしブツブツとこんな風に心で悪態がつける時はまだマシだろう。
入院するようなレベルになった時、激しい頭痛が止まず、紅斑が蝶々の形で顔の上を飛び、幻覚や幻聴が飛び交い、別の世界へと誘われる。
そうならないために私は布団にくるまっている。これ以上悪化させないために。
あの世界はいつも新鮮な恐怖を私に与えてくれる。何度も再発を繰り返しているはずなのに、滴り落ちるように夢を見させる。
現実ではないと分かってはいるのに現実として横たわる。
誰に説明しても理解を得られず、私は私の脳みそが作り上げた世界に苦しめられるのだ。
毎回分かっていて幻に引っかかる。学習能力のない私である故なのだろうか。
髄膜炎の頭の痛みや顔の赤みというのは、ステロイドの点滴で急速に鎮まるのだけれど、このニセモノの世界というのは、なかなか消失しない。
痛みはないけれど、この幻覚幻聴に最も苦しめられるような気もする。
他の症状はステロイドの大量注入によりすぐさま治まるのに、夜中に病院の壁に曼荼羅が浮かんだり、私の鼻の上に青い妖精が座っていたり、愛と平和を歌う私がいる。
こういう極彩色の世界を味わいたいがために、わざわざ違法薬物を購入してキメる人々がいるけれど、私からすれば、そんな世界、とっとと抜け出したいんだけどな。
あれ?ちょっと待って。もしかしてここ10日の出来事っていうのは、現実ではなくて幻想なのかしら。
だったらはやく受診をしなければ。