ここ10年ほど、年間通じて日傘を差すということはなくて、何とか生活できている。
というのも、遅ればせながら化粧をすれば紫外線は防げるのだということに気付き、専らこちらに頼るようになったので、日傘の時期は半年ほどであろうか。
(まったく私は今まで何をしていたのだ)と自分自身を叱責してしまうほど、移動する時の荷物の少なさに、紫外線対策としての化粧の軽やかさに、ついでに外見的に盛ることのできる喜びにはまっているのだった。
化粧をはじめたばかりの頃は、ランコムだのディオールだので化粧品を買い揃えていた。
理由としては第一に、一つのお店で買い物が済むではないかという、ものぐささからくるものだろう。第二にはやはり、ラインで揃えた方が化粧品同士の相性もよく、化粧崩れが起きにくいだろう、という考えからだった。
けれど私の経済事情というのは大変不安定なものがあり、このライン買いということが不可能になることがある。
今でこそだいたいのお店ではウェブショップが開設されており、ここで購入するというやり方もできるわけだけれど、私が化粧を覚えたての頃というのは、そういった販売の仕方をしているお店は先進的であり、つまりあまり存在しなかった。
ということは、お店に直接買い付けに行かなければ、お目当ての商品を購入することができなかったのである。
すると貧乏を背負いながらお店に訪れるなど、双極性障害の鬱の時期などは気持ちが起きるわけがなくて、化粧品を切らしたまま、仕方なく白浮きする日焼け止めを付けた上にマスクをして外出したりしていた。
でもこのままじゃいけない、どうにかしないといけない、といつも心ではグルグルと反省の弁を述べているわけだけれど、何せ鬱、キレイなお姉さんばかりいる化粧品のカウンターにのこのこと出向くだなんて勇気が出てこなかった。
ある日お金はないが暇を持て余し、化粧品のことをネットで調べていたら、『チャコットのフィニッシングパウダー』に出会う。
私は小さな頃クラシックバレエをやっていた関係で、チャコットというメーカーは勿論知っていたので(考えてみたら、化粧品用具があっても何ら可笑しくないものね)とその時妙に納得したものだ。
例えばランコムで6000円くらいするお粉なのであるが(もっと高額なものもある)、チャコットのものでは2000円以下という破格の値段で手に入れることができる。びっくりするくらい経済的に優しいのだ。
さらにダンスメイク用品だけあって、値段が安いからといって、すぐに化粧がヨレてしまうということがない。基本的に朝粉をはたいたら夜化粧を落とす時まで、直しの必要は感じない。
またこのフィニッシングパウダーの最大の魅力は、毛穴を目立たなくしてくれる力に大変優れているということだ。
ランコムのBBクリームを塗ってからチャコットのフィニッシングパウダーをポンポンとはたけば、自分で書くのも何であるが、それなりの透明感を演出することができるのである。
ラインで高級化粧品を揃えるということに難しさを感じた場合、こういった良品で節約できるのならば、それに越したことはないのではなかろうか。