私はレコード収集家だ。今でこそレコード屋をのぞくことが少なくなってしまったけれど(今はネットオークションで落札することが多い)、学生時代から細々続く趣味であり、何となく続いている唯一の趣味だ。
勿論CDで再生したり、最近だとダウンロードしたりすれば、お手軽に音楽を楽しむことができるだろう。
さらに現在は、名盤と言われるものがことごとく再発されているし、わざわざレコードを買う必要なんてあまりないのだろう。
それではレコードの魅力とは何なのか。
まずレコードの場合、盤を丁寧にターンテーブルに載せて、針を溝に落とさなければ音楽にありつけない。またこうした手間のかかる動作は愛すべきものであるし、贅沢な時間の無駄遣いに思えてならない。
レコードを棚から取り出し、紙ジャケットの匂いが鼻をくすぐる時「よーし聴くか」と気合を入れなければ音に逢うことができない。
それは少し感傷的な気持ちにさえさせられる、同じ音楽を聴くにしても音楽に重みをもたせてくれる。
これがレコードの魅力ではないかと、私は思っている。
ところで音楽の趣味というのは本当に個人的なことであり、自分の好むジャンルを人に紹介するなどというのは、自慰行為を人に見つかってしまったくらいの恥ずかしさがあると思う。
けれどここはブログであって、対面で伝えるわけではないので気恥ずかしさも少なく、せっかくなので紹介していこうと思う。
どんな音楽のジャンルを聴いているかというと、かなり雑多であり、クラシックも聴くしヒップホップも聴くし、ジャズも聴くしソウルも聴くし、ブラジルものも聴くしと、挙げるとキリがないかもしれない。
どのジャンルもオススメなのであるけれど、あえて選ぶとするならば、特に強く推したいのは『ブラジルもの』である。
理由はたったの一つで、言葉の意味がそんなに分からないので、英語や日本語の音楽のように、作業を中断して音楽だけに集中しなければならない、ということがないのだ。
歌詞が流れるように歌い手によって表現されているのだけれど、英語や日本語のように意味が分かってしまい、単語や文をつい拾ったり追いかけたりするということがまず皆無(ポルトガル語を勉強したことがなければ)。
故に作業用BGM感覚で聴くことができる、それがポルトガル語で歌われた曲だ。
また、断然ポルトガルのポルトガル語より、ブラジルのポルトガル語をオススメする。
というのは、ブラジル人の方が、喧々としておらずゆったりとした優しいしゃべり方だからだ(実際、一般的にはそう言われている)。
そこでブラジルものの中で一枚紹介するとするならば…これは困った、絞り切れない。と言っても、絞らなければならない。
これでしょうか。『クアルテート・エン・シー』という4姉妹のグループのアルバム。
ネット上を探せばすぐに引っかかってくると思うので特に詳しく書かないけれど、4人のハーモニーが美しいグループである。
特にこのアルバムではスキャット(意味のない音)で歌う曲があるのだけれど、これは最早ポルトガル語が解る解らないという以前に、スキャット自体が意味を持たないので、純粋な音楽として楽しめること請け合いである。
CDやダウンロードのように気軽に好きな音を探せる利点を選ぶのか、レコードのようになかなかお目当ての盤に出会えずに、必死になって探すのか。
それは後者の方が勿論馬鹿げているし、また音楽を楽しむという本質から脱線しているようにも思えるけれど。