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告白 その12

茅ケ崎で母と同棲している、横浜の病院に勤める原医師と母との関係はそもそも同郷であり、そして母親の家庭教師をしていたのがこの原であったという。

偶然出会い、惹かれあったという純情なものではなくて、母があることないことドラマチックに自分を演出し、そうして原が騙された、ただそれだけの男と女の関係であった。

「あんなヤツを落とすのは簡単だよ」

例のファミレスで笑いながら中学生の私に話す母。

ところが原は既婚者であり、子どもが3人いる父親であったのだ。

そういう立場の人間を、自分の生活を守るために利用して引き込む、そういうことを厭わないのが母であり、今にして思えば病的な思考だとも取れるのだが。

「私は不幸だ、誰も養ってくれない」だったら他人から亭主を取り上げてまでも、自分の生活を成り立たせようとする母。それが彼女のやり方であった。

当然の結果だろうが、原の妻は怒り、そして主人を返してくれと、私たちの家までにも手紙や電話を寄こすようになる。

そのことを母にチクリと伝えても、「手紙は破っていいから」「あの女の頭はおかしいから」「原は私を選んだのだから」と強気な発言を繰り広げるだけだった。

「お子さんがいるんでしょ?」と突くと、「子どもと言ってももうハタチ近いから成人と同じだし、別に影響はないから」と無責任な発言をする。

そうして原はとうとう家族を捨てて離婚をした。

そして母との結婚を望んだようであるけれど、母はどういうわけかこれを受け入れなかった。

ここまで自分勝手な女も珍しいし、彼女の腹の中など理解できる術など私にはないけれど。

とにかく母は周りの人間を巻き込んでもそれが当たり前だと思い謝罪もなく、寧ろ猛然と攻撃を仕掛けるという方法で生きていた。

原が離婚した直後だったろうか、原の3人いる子どもの内の末っ子の高校生が、統合失調症を発症する。

「あの女の血筋が悪かったんじゃないの?」

勝ち誇ったような、そんな言い方に私には聞こえた。

親の離婚が病気の引き金となった、そういう風に考えることはできないのだろうか。

相手を慮ることができず、全て自分の利益不利益で動くことしかできない女であり、でも私はこの時、母が狂っているだなんて露程も思わなかった。

母とはそういう生き方しかできない、可哀そうな女なのだと、いつしか思うようになっていた。

私にしてきた暴力暴言育児放棄にも似た行為を忘れたわけではなかったけれど、それよりも母が可哀そうな女に思えてならなかった。

彼女が強がり吠える時、私に哀れまれていることを彼女が気付くことはなかっただろう。

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