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告白 その21

「助けてくれ」

夜遅く、涼太からの電話であった。

助けてもらいたい理由が分からないので詳しく聞き出したかったのだけれど、電話の向こうの声は震え、泣いている。

「警察に捕まった」「拘留されている」

物騒な、聞き慣れない言葉が電話口から飛び出してきた。

どうやらこういうことだ。深夜道を歩いていると、向かいから歩いてくる男がガンを飛ばしてきたというのだ。本当は涼太からだったかもしれないのだが。

まあどちらが先にというのはどうでもいい話で、バカにされたと頭に血がのぼった涼太は、相手を近くの駐車場の隅まで引きずって連れて行き、そこで殴る蹴るの暴行を加えたらしい。

ところが誰かが警察に通報したのだろう。

現行犯で逮捕されたのだ。

結果相手は入院するほどの傷を負う。

「お前のオヤジさんの力でどうにかならないか」

懇願というよりも祈りに近い声で私に涼太は訴えた。

たまたまその時家にいた父に、簡単に起こっていることを私は説明する。

「どこに捕まっているんだ?」

私が拘留場所を教える。

「名前は何て言うんだ?」

涼太の名前を伝える。

「君はもう関わらなくていい」

そう、父には短く伝えられた。

翌日朝だったと思う。再び涼太からの電話が鳴る。

「お前のオヤジさんのおかげで、外に出ることができた」

父は仕事上交友関係が広いので、その誰かが動いてもみ消してくれた、そういうことだろう。

結果涼太は示談という形で書類送検されるわけでもなく、経歴に傷つくようなことはなかったのだ。

おそらく父が助けなければ大学は退学に追い込まれていたけれど、示談金と相手の入院代いうのもどうやら父が出したようなので、涼太自身の親が知ることもなく、この暴行事件は片付けられることになったのである。

「涼太くんというのか、今度中華料理を食べに行くから、連れてきなさい」

私はてっきり父に涼太と別れろと言われるのかと予想していたのだけれど、答えは意外なものだった。

私は涼太を連れていつも食べに行く赤坂の中華料理店へ行く。

父と兄、弟はすでにテーブルに着いていた。

なるべく存在を消すように、私は食事を始めた。

ところが涼太の家は平凡な一般家庭ということもあったのだけれど、それにしてもテーブルマナーがなっていなかった。

けれど父はそういう涼太を見ても「好きなやり方で食べればいい」「美味しいと思うやり方で食べればいい」と叱ったりバカにしたりしなかった。

「男はその位元気な方がいい!」

上機嫌に老酒をあおる父。

父はおそらく彼に昔の自分を重ね合わせていた部分があるのだと思う。

これをきっかけに涼太は父の太鼓持ちのような立場を買って出るようになり、家族での食事の席や酒の席に呼ばれるようになった。

準家族、そういう位置付けか。

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