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告白 その26

美月から紹介された医師は女子医大で内科系の教授をしている内藤という男だった。年恰好は父親の少し上、そんな感じだろうか。

その男との食事の席を帝国ホテルの和食屋に美月が設け私も同席させられる。そうしてうやうやしく例の大量カルテコピーを彼の前に差し出していた。

すると内藤はその中身をパラパラと数枚しただけで大して読み込みもしないままに、

「来週早速膠原病の先生を紹介するから、病院まで来てください」

「その時に必ず何か、お菓子で結構ですから、先生への心づけを忘れないでください」

と口早に告げた。

おそらくただ内科系というだけで、SLEの知識が浅く、実際のところ読んでも理解できなかったのかもしれない。

こんなことであるならば、別に大量のカルテ開示なんてしなくてもよかったではないか、私は心でそう毒づいていた。

大学教授、確かにその地位まで登りつめたのは並大抵のことではないとは思う。人知れず努力を積み重ね、と同時に理不尽な世界であったりもするのだろう。

だがしかし、だからといって内藤のふんぞり返ったような態度が私には分からなかった。なぜ彼は謙虚ではなく、まるで自分が世の中の全てを制しているような態度でいられるのか、そこが解せなかった。

父と美月を当然のようにかしずかせお酌させ、ありがとうございますの一言すらない。武道の世界に長年身を置いていた私にとって、そういう態度は許せない、というより信じがたいことであった。

さて週が変わりいよいよ女子医大の膠原病センターへ初通院する日。内藤とセンターの入り口で待ち合わせ、そうして待合室で順番を待つこととなる。

あの酒の席でわかったことなのだけれど、内藤は私が4月から入学が決まっている専門学校の先生もやっているのだということを聞かされたのであった。

大学卒業後就職せずにフラフラしていた私は、手に職をつけようと理学療法士の専門学校に通うことにしたのだった。内藤はそこで教鞭を執っているという。

大学病院の医師が給与の少なさを補うために外でアルバイトをする、というのは聞いたことがあったけれど、まさか教授クラスの人でもアルバイトをしなければならないのか、と冷めた目で内藤を見ていた。

内藤が待ち合わせに遅れてきた。「ごめんね、遅れちゃって」妙に馴れ馴れしかった。それが彼のくせなのだろうか、私の腰を抱くように院内へ案内される。

腰の辺りの不快な違和感を私は無視して、内藤に導かれるままにセンター内にあるソファに腰掛けた。

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