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告白 その27

心づけ云々という注意が病院の柱には書かれている。それだというのに内藤は持っていくというのか。

すでに内藤の手に託した和菓子の包装と柱を交互に眺めて私は時間を潰していた。

というのも、ほぼ初対面といってもいい内藤がまくしたてるように私に話しかけてくるので、返し方も分からず適当な相槌を打っているだけで、他にやることがなかったからである。

確か話の内容はこんな感じであった。

専門学校を卒業した後の就職先は内藤が保証する。

まだ学生生活も慣れないだろうから、しばらく内藤のところへ通って勉強をしたらどうだろう。

だいたいこの2点でだった。

現在理学療法士というのは引く手あまたという状況かというのは私の知識不足ではあるが、当時私が志した時はとにかく不足をささやかれていたし、そうして日に日に必要とする場所が増えていっているような感じであった。

だから選り好みさえしなければ100%に近い数値で就職できたし、だからこそ勉強に専念できるのだと理解した上で専門学校の試験を受け合格し、入学する予定だったわけである。

それなのにいちいち首を突っ込んでくる内藤が鬱陶しかった。

だけどこの手口というのは、父が私を自分の仕事の駒として就職先を勝手に決めてしまった時と似ており、それと同じようなことがまた起きることが見えていた。

けれど「専門学校ではクラス担任だという、このおっさんからどうやって離れればいいのだろうか」と特に策が思い浮かぶわけでもなく、例の心づけ云々の柱を見つめるしかなかった。

ようやく私の順番がきてドアを開けとようとすると、内藤が出しゃばって先にドアを開け中に入る。

中にいた日野教授に和菓子を渡しながら「よろしくお願いします」とうやうやしく伝えている。

日野はきょとんとした顔で内藤を見つめていたが「ああ」と小さく返事すると、それを納めた。

特に内藤と日野が親しいという感じではなく、その後の会話が続くというわけでもなく、微妙な空気の中内藤が診察室から出ると、私はようやく部屋に入ることができた。

なんだ、内藤とは大学内でも大した存在でもないくせに私に万能を装い、己以上の力を持っている、そういう小学生のようなすぐに分かる見栄を張っていただけなのだと呆れた。

一方日野教授の診察は丁寧だった。患者に寄り添って聞こうとする態度であったし、なるほどこういう先生であるならば、人気になるだろう、ということが数分の診察からでも感じ取れた。

さて診察が終わり部屋のドアを開けると、少し離れたところで内藤が立っていた。あの時もう大学内だかにある自室に戻ったのだと思っていたので、私はびっくりする。

すると内藤は私に歩み寄ってきてこう言った。

「院内に喫茶があるので、そこでゆっくりお茶でもしませんか」

内藤にとってこれこそがメインであったのだろうけれど、私はそうとは知らずに誘われるままについていくことしかできなかった。

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